留学体験談

博士課程で国際安全保障学について研究

峯畑 昌道さん

峯畑 昌道さん

beoの留学サポートを利用され、ブラッドフォード大学の博士課程で国際安全保障学について研究をおこなわれている峯畑さん。渡英から約4年が経ち、つい先日には、beoで開催されたブラッドフォード大学のイベントに教授陣に並ぶゲストとして個別相談会やレクチャーにご参加いただきました。 今回はそんな峯畑さんに、留学当初を振り返っていただいてお話をお聞きします。

【中編】修士課程から博士課程、そして研究プロジェクト

ブラッドフォード大学修士課程での様子について教えてください
教授陣は、広い研究領域の各分野において著名な学者が学部に所属しており、学生への知識の伝達、研究活動のサポートの両面において質の高い環境を用意しています。授業形式は、一講義につき一つのセミナーが予定されており、知識の獲得と、意見の交換がバランスよく行えます。

30を超える国から学生が集まる
修士課程は、毎年100名程度の学生が30を超える国から集まっています。学部卒業直後の20代や定年退職後の60代を含む幅の広い年齢層から、また自然科学や社会科学といった異なる学術バックグラウンドから、さらに市民活動や国家政策といった経験の違いをもった学生が、一つの学術コースで机を並べ議論ができる環境は、世界問題を考える際大変有益であったと感じております。

博士課程へ進まれた理由について教えてください
分析的視点、解答提示能力を磨くために
修士課程を通じ、研究の関心事が、生命科学分野における安全保障上の脅威とその予防のための国際的枠組みの強化、に収斂いたしました。また、当該分野への理解を深めることを超えて、現実世界における個別具体的な政策、活動を妥当なものにするための洗練された視点の提示が非常に重要であると実感いたしました。

同時に、自分にはそのための情報資源、分析的視点、そして解答提示能力が欠けていることも実感いたしました。包括的にそのような研究資質・方法論を習得する必要性を感じ、そのためのトレーニングを受けるため博士課程への進路を決定いたしました。

修士課程の頃との違いは?

学術的・実際的な妥当性を伴わせた独創性
修士課程はMasters と呼ばれるように、学術的に、ある特定の社会問題を理解し、そして当該問題を説明する現存の文献を基に自己の見識をまとめる・マスターするといった目的があると考えられます。一方、平和学における博士課程は既存の文献を通じた社会問題の理解を超えて、現在起こっている社会現象の理解の方法、情報入手の方法、情報分析の方法を哲学し、当該問題に変化をもたらすための独自の見解、指針、もしくは解決案を提示することが一つの重要な目的であると考えられます。

ブラッドフォード大学平和学

博士課程の研究においてはその独創性が重要視されるので、研究方法に関する学生の裁量が大きいのは事実ですが、これは思いつきの発言が受け入れられるということを意味せず、自由に行われたその研究が学術的・実際的な妥当性を同時に有していることが重要とされます。

実際には、後者の評価は学生個人の判断では難しく、現在特定研究分野でどのような新しい研究がなされ、議論され、そして実際に使われているのかどうか、その妥当性の判断を仰げるのが指導教授です。

したがって、指導教授が実際に各研究分野で、理想的には当該分野の前線において、研究活動もしくは政策立案を行われている場合が望ましいと考えられます。

研究プロジェクトの内容について教えてください
2つのプロジェクト
現在は平和学部内に開設されている5つの研究所の一つ、ブラッドフォード軍縮研究所に在籍しております。 研究テーマは2つございます。
第一は、私個人の博士課程「冷戦後外交:生物兵器禁止条約の進化と日本の政策」です。 それと平行する形で、第二に、英国首相イニシアチブ(英国文化振興会)の下、本軍縮研究所における私の指導教授二人と共に、防衛医科大学校(日本)と共同研究を行っております。


今夏に生物兵器禁止条約会議にて発表予定
この防衛医科大学校との協同研究におけるプロジェクトでは、生物兵器禁止条約を基に「生命科学者のための安全保障倫理教育」を実施・推進しております。現在は日本における生命安全保障教育の現状調査を実施し、報告書をまとめました。来る2009年8月、国連における本条約会議においてその発表を予定しております。また、本プロジェクトによって開発途中の生命科学者用の教材も12月の条約会議において締約諸国に完成披露・その後一般公開を計画しております。


ジュネーブ会議に参加されたきっかけ、参加された感想を教えてください
現場=条約交渉現場
私の研究の場合、いわゆる現場というのは条約の交渉現場になります。ジュネーブはこれまで2005年冬、2006年冬、2009年春、合計3回、約3ヶ月滞在いたしました。国連機関もしくは関連財団に在籍し、関係機関に生物兵器禁止条約の交渉過程を報告いたしました。これは同時に博士課程研究、もしくは日英共同研究用の情報収集という目的がございました。

ブラッドフォード大学平和学会議への参加により、締約国による実際の国益をかけた交渉現場を確認することができました。

条約強化という絶望的アート
国際安全保障の学術的言説が、如何に実際の条約強化に資するものになり得るのか、そのような研究分野に足を踏み入れたのだという心構えをする上で、特に初回の参加は重要であったと記憶しています。国際政策の形成・発展過程が時事的な国内・国際情勢に大きく左右され、条約の強化は、非常に多くの環境要因が必要とされる絶望的なアートであると認識させられました。

しかしながら、国家代表団、NGO、科学者そして学術研究者が、継続的に正当性を担保しつつ政策を議論する必要があり、そのためにはやはり公式な枠組みを基に生命安全保障を強化してゆく必要があることを現在でも実感しております。